2010年 06月 19日 ( 1 )

Match 23 - Group C
England 0-0 Algeria

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カペッロは決断した。
初戦のアメリカ戦でミスを犯したゴールキーパーのグリーンを先発から外し、39歳のデービット・ジェームズを起用した。バリーが怪我から復帰して先発に名を連ねたのもイングランドにとっては好材料だった。怪我で離脱したファーディナントの代役はキャラガーが務める。

しかし、点が取れない。攻撃の形が見つからない。イングランド代表の真価が発揮される気配がない。
この日の「砂漠のキツネ」は、狡猾でも老獪でもなく、スペインに勝ったスイスやブラジルに堅守で対抗を試みた北朝鮮のように、リトリートし続ける防戦一方の戦術を敷いたわけでもなかった。ジダンのルーツとフォーカスされる所以にも頷ける高い技術力で、奪ったボールを失わずに善戦した。試合全体のポゼッション率も53%とイングランドを上回った。「どちらがイングランドだったか、わからなかった」とは、大会前にイングランド代表と日本代表のテストマッチを視察したイビチャ・オシム氏の感想だが、この日も「どちらがイングランドだったか、わからなかった」。

次々と途中投入されたライトフィリップス、デフォー、クラウチも試合の流れを変えるには及ばなかった。試合の終盤、主審のジャッジに怒りを露わにするカペッロの眉間の皺は深くなるばかりだった。
何か手を打たなければならないのは必定である。

イギリスのニューズ・オブ・ザ・ワールド紙は、マラドーナの「Hand of God」に掛けて、「Hand of Clod(間抜けな手)」と初戦でミスを犯したグリーンを酷評した。しかし、「Hand of Clod」の病根は、案外根深いと勘繰られ始めてもおかしくない、平凡なパフォーマンスを現在のイングランド代表は露呈している。
プレミアリーグで「Big 4」と呼ばれる強豪4チームの正ゴールキーパーは、すべて外国人である。ご存知の通り、チェルシーはチェフ(チェコ人)、マンチェスター・ユナイテッドはファンデルサール(オランダ人)、リバプールはレイナ(スペイン人)、アーセナルはアルムニア(スペイン人)。長らくイングランド人ゴールキーパーの大舞台での経験不足などが指摘されてきた。

しかし、同時に現状のイングランド代表の低調なパフォーマンスを見れば、ゴールキーパー以外のポジションの選手たちにも同じ猜疑や批判の目が向けれてもおかしくないのではないだろうか。
たとえば、ルーニーはギグスやスコールズなどのベテラン選手がいなければ、あの闘志を全身で表現するようなゴールの嗅覚を発揮出来ないのではないのか・・・。ランパードやアシュリー・コールは、ドログバやアネルカがいなければ、素晴らしい攻め上がりからゴールを決めてみせることが出来ないのではないのか・・・。ジェラードはフェルナンド・トーレスが・・・、キャラガーはアンフィールドの熱狂的なリバプール・サポーターが・・・。

無論、そんな筈はない。
イングランド代表が現時点ではチームとして成熟の域に達していないだけであり、素晴らしい選手たちが真価を発揮できる状態にないだけだ。爆発にはカンフル剤が必要だ。何かのきっかけさえあれば。でなくては、今大会ここまで大健闘を続ける「大きな小国」との最終戦の結果は、「まさか」の危険なものとなる。
ミスを犯したゴールキーパーを外す微調整だけでなく、万全ではないバリーではなくキャリックに賭けてみるとか、ベンチに座るジョー・コールやクラウチに長い出場時間を与えるなど、先発メンバーの刷新をも含めてカペッロは決断を迫られるだろう。

だが、試合後のスタジアムを包んだイングランドサポーターの大ブーイングは、常々カペッロが選手たちに求める「イングランドのスピリット」がピッチ上で表現されなかったことに対するものであった筈だ。
遠く南アフリカの地まで駆けつけたイングランド・サポーターの叫びを、「あの男」はどんな気持ちで聞いたのか。「イングランドのスピリット」を覚醒させることが出来るのは、カペッロが連れてきた24人目の選手、「あの男」だけなのかもしれない。
若き日の過ちも、狡猾なライバルとの死闘も、どん底も銀河系軍団も経験した男は、今、スーツ姿で自身最後となるであろうワールドカップを戦っている。

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by marc_keio | 2010-06-19 05:30 | football