天皇杯決勝 鹿島vs広島

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「創造者と破壊者。」


創ろうとする者がいれば、壊そうとする者がいる。
ポゼッション主体の理想的なサッカーを目指す者がいれば、必ずそれを阻もうとする者がいるということだ。
Jユースクラブ選手権「サハラカップ」決勝では、パスをつなぐ柏ユースを相手に、FC東京ユースは90分間プレスをかけつづけ、見事、カウンターからの決勝点で王座に輝いた。
天皇杯決勝の鹿島の2トップの田代とマルキーニョスも、シュートを打ち終わった次の瞬間にはGKのセットするボールに反応して、広島に“つなぎ”をさせない徹底ぶりを披露した。

“オズの魔法使い”の異名をもつ鹿島の“オズ”ワルド・オリベイラ監督は試合後、
「守備が安定しなければ、攻撃は難しい。(中略)ディフェンス陣だけでない、11人全員の守備。FWからフィルターをかけていくやり方が、今回の結果につながった。私はプライドを持って、守備にも攻撃にも取り組む選手を求めている」
と魔法のレシピを明らかにしている。

創造しようとする者がいれば、破壊しようとする者がいる。
理想を追い求めながら、無理にでもパスをつなごうと散っていった柏ユースの選手たち。鹿島のプレスの前で、準々決勝の対FC東京戦のような理想的なパスサッカーを展開できなかった広島の選手たち。

元日の聖地には、構築と破壊の現実模様が映しだされた。

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「実力者たちの意地。」


広島に、寂しい実力者がいた。
前半23分、この試合の1枚目の警告は、広島のイリアン・ストヤノフに対してのものだった。小笠原がファウルギリギリのタックルでボールを奪うと、すぐにストヤノフが警告覚悟で報復タックル。小笠原をピッチにたたきつける。
駆け寄った扇谷主審が警告を掲げるものの、鹿島の選手がストヤノフを引きずり回し、はるか遠いゴール前からGKの曽ヶ端まで猛然と駆けつけてくる騒ぎ。
小笠原にではなく、アクシデントのような早すぎる時間帯の失点に浮き足立つ若き広島イレブンに、百戦錬磨のブルガリア人は目の覚めるようなタックルを見舞ったのだろう。

c0119546_22572843.jpg3バックの中央で、最もボール保持時間が長いストヤノフ。最終ラインでビルドアップに参加したり、ボランチとして顔を出したり、3列目からの飛び出しでシュートレンジに侵入したりと、広島の司令塔然と走りまわったストヤノフ。でも一番ミスの多かったストヤノフ。

オシムが千葉に根付かせたサッカーの崩壊に警鐘を鳴らすように、アマル監督を批判して千葉をクビになったストヤノフの元旦は、孤軍奮闘の空しい闘志の空回りのまま終わってしまった。味方を削った相手を猛然と削り返してチームの士気を高めようとしても、今度は逆にひどいタックルを受けて自らがピッチにうずくまれば味方選手は知らんぷり。

敗戦の笛が鳴り、ひとりだけピッチに倒れこんだ広島の選手がいた。
ストヤノフだった。来期、舞台をJ2に移して奔走する彼の姿を想像すると、なんだか切なくなってくる。


c0119546_2247458.jpg鹿島の実力者は、スタイルに忠実だった。
シュートを打たないストライカーが“柳沢症候群”と揶揄されるほど、彼のイメージは定着してしまった。そのイメージを裏切らないラストパスを送って、賞味1分あまりの出場時間でダニーロのダメ押しの追加点を演出してみせた。

後半ロスタイム投入がお決まりの“切り札”として、冷たい師走のベンチを温めつづけた天皇杯。最後にカップをキャプテンとして頭上に掲げ、ファンには拡声器を渡されてコメントを求められた。
Mr.アントラーズは、やはりMr.アントラーズなんだな・・・となぜか感心してしまう光景。
柳沢敦の去就に注目だが、ほぼ東京ヴェルディへの移籍は確実か。

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昨シーズンのラストゲームが元旦にあるようで、なかなか天皇杯の位置づけと評価も難しいものがある。しかし、「浦和が敗れて他力本願で優勝」ともみられていた王者の鹿島がしっかり“誇り”を懸けて2冠を達成したことは大きかったし、J2降格の決定した広島がファイナリストとして意地を見せたのも来期につながるだろう。

冒頭にも述べたが、今年は“美しいサッカー”と“現実的なサッカー”のコントラストに注目してサッカーを観たいと思う。
元旦からサッカーに触れることができて幸せだった。
この場を借りて、招待してくれた友人に心の底から一言を、“ありがとう”。
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by marc_keio | 2008-01-01 23:22 | football