想い、結実。(2)

すべては運命だったのかもしれない。

アイリーグ前日、いろんな出来事が重なって、
90分の試合の意味が、風船のようにみるみるうちに膨らんでいき、
風船のような色とりどりの“想い”が、下田で、オレのなかで、高まっていった。
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大勝の裏に隠された、数々の“想い”、ここに。




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「誰が出るかわからない。」

そう言いつづけて負荷を落とさなかった1週間のトレーニングは、アイリーグ前日の紅白戦で過去最高の形で仕上がった。
最後まで27人全員が、アイリーグを目指して走りぬいた1週間。
緑のピッチで交錯する選手達の想いと実力を
最小限に言葉をとどめて、じっと凝視した。

練習後、
今週やることのすべてが終わったと、塾高の練習を見ていると、
後藤先生に呼び止められた。
1時間あまり立ち話をして、素晴らしい話を聞くことができた。

選手ひとりひとりの“性格”、“個性”を知り抜く必要性、そして選手ひとりひとりの“4年間”と、その後の“人生”を預かっている責任をひしひしと感じながら、リサーチ部屋に戻り、27人の中から18人のメンバーを選ぶ作業と向き合う。

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選手の“個性”について後藤先生と話し、今度は選手の“想い”と向き合う大切さを語り合う。
サッカーに対する選手の想い、アイリーグに対する気持ち、調子、失望、コンディション、プライド・・・オレが追い求めるサッカーをしているのは、システムでも、駒でも、タクティクスでもなく、血の通った人間であること。

選手ひとりひとりと向き合って、その“想い”を汲み取る大切さを、わかってはいた。向き合ってもきた。でも、まだ足りなかったのかもしれない。



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18人のメンバーを決め、宮沢さんとご飯へ。
そこで、「A2には一体感がない。」とひたすら言われる。
家路をたどりながら、井の頭線に揺られながら、これまでのA2に思考を傾けつづけた。

深夜2時ごろまで電話したり、ひとり自室で静かに考えて、
ひとつの結論がでた。

電話でキバヤシに、明日の集合を15分早める連絡網を回していいか聞き、
選手達は試合当日は早めに来るだろうということで回さなかったが、
気持ちは鎮まり、思考は整理され、余分な感情はそぎ落とされ、
研ぎ澄まされた想いだけが、残った。

試合前だが、多少自尊心が傷ついても仕様がない、下を向いてしまっても仕方ない、オレが感じてきた真実をはっきりと伝えて、土壇場で一体感を生み出す策に出よう。

電話越しに、何度もささやかれた言葉。

「あした。。。」

そう、明日。

すべては、明日のピッチの上で証明してみせる。

勝てる気しかしなかった。

“想い”は、確信に変わっていた。







アイリーグ当日。

11時にミーティングルームに集合した選手達の前で、20分間、ひたすら話をした。
選手達は、それぞれの表情で、話を聞いてくれた。

過去をさまよう表情、過去の自分と向き合っているような視線、挑んでくるような目つき、下を向いてしまう選手、うなずきつづける選手・・・。

“想い”は引き出せたのか、“想い”は重なるのか。

すべての解答は、ピッチが教えてくれた。










7-1。




今までやってきたことに、間違いはなかった。

トップに劣る個の集まりで、トップのサッカーを目指した時期、
オレの理想のサッカーを追い求めさせた時期、
やっぱり無理かと放り出して、後戻りした時期もあった。

でも、すべての糧は、しっかりと積み重なっていた。

選手達の心と身体に、染み付いていた。


走れ。
お前が走らなくて誰が走る。

守れ。
お前が中盤でカギをかけろ。ぜったいに扉は開かせるな。

決めろ。
今日は李さんも見てるから。



ひとりひとりと試合前に向き合う。

“想い”を受け止めて、“想い”を伝える。

人と人だから、手をつないで、想いを重ねて、ピッチの外から見守り続けた。

ゴールが入るたび、“想い”をかみしめた。
ゴールが入るたび、何かを認められた気がした。

リスクを冒して前に出て行く。
ボールを追い越して前に走る。
前に出て行った選手の穴を埋めるために我慢して自陣に残る。
すなわち、水を運ぶ。
追い越して、走れ。
死ぬまで走れ。
考えて、走れ。
とにかく、運動量。
とにかく、気持ち。
ただ、ひたすら、
魂。

言い続けてきたことをピッチで表現してくれた選手たち。
水を運ぶどころか、洪水のようになだれこんでいく。ゴール目指して。
全員で。

戦っていた。走っていた。
全員が。

今までなかったもの。どこかに置き忘れていたもの。
足りなかったものが、ピッチにはたしかにあった。




“気持ち”。




ただの気持ちではなく、


上を目指す気持ち。


ゴールを目指しながら、
目指しているのは、
走りながら目指しているのは、勝利だった。

でも、
さらに走りながら目指しているのは、トップだった。

全員で戦いながら目指していたのは、
このチームにサッカーで貢献できる唯一の場所のことだった。


応援してる選手達。
その一丸の姿に感激しながらも、感謝しながらも、
その選手達のいる場所へ・・・、

オレがつれていく。

李さんが合宿所のベランダに見えた。

見ろ。このサッカーを。彼らを。
使ってくれ。

そこを目指す“気持ち”が、足りなかった。
あの日、あのピッチでは、その気持ちのベクトルが同じ方向に向いていた。

みんなが、李さんの前で、同じ場所を目指して走っていた。
だから、心に響いた。だから、止まらなかった。


そして、同じ場所を目指すからこそ生まれる信頼。連帯感。
1年生も、2年生も、3年生も、4年生も、
学年など関係ない。
“想い”が、連鎖し合う。

リスクを冒して、前に出て行く。
仲間を追い越していく。
とにかく走る。仲間の分も。仲間のために。

一緒に戦っているのは、友達ではなくて、仲間なんだから。

一緒に結果を出して、上に行くんだ。
だから、みんな、仲間を信じて走りつづけた。


譲れないプライドを守り続けて、
目を背けていた現実を突きつけられて、
はじめて、A2というチームが、無防備に、一体感をさらけだしながら、
ひたむきに走っていた。


“気持ち”は重なり、“想い”はつながり、
気がつけば、7つものゴールが生まれていた。









試合後、
身体の力が抜けて合宿所の裏で坐っていたオレのところに李さんが来て、
握手を求めてきてくれた。




「あッ!名将の山浦監督じゃないすか!コンチワ!笑」





そう言って手を握ると、ふと李さんの顔が真面目になる。





「・・・、」






「本当に、素晴らしかった。よくやった」




本当の戦いが、はじまる。
そのときは、握り返すことしかできなかった。

でも、もう、次の戦いははじまっている。
筑波戦に向けて、多くのすることがある。

全試合、ラストゲーム。
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by marc_keio | 2007-07-11 01:24 | football