魂の次元

c0119546_12294789.jpg懸けている魂の次元がちがう。

昨晩、NHKスペシャル「サミュエル・エトー アフリカを背負う男」を見た。サミュエル・エトーが背負うもの。それはカメルーン国民の期待だけでなく、アフリカそのもの。

「俺の心のなかには、いつもアフリカがある。」(サミュエル・エトー)

後に「サミュエル・エトー通り」と名づけられた、カメルーン国内でも特に貧しいその地域にある一本の道は、かつて幼いエトーが夢中でサッカーボールを追いかけた場所である。生活が貧しいために夢を諦めざるを得ない少年たちの為に、エトーは毎年8000万円の私財を投じて「サミュエル・エトー財団」を運営し、プロのサッカー選手を目指す少年たちの生活費を賄っている。自分もかつて同じ境遇に置かれた少年だったからだという。

2006年2月25日、エトーがバルセロナでプレーしていた頃、アウェーでのレアル・サラゴサ戦で事件は起きた。前半にゴールをあげたエトーに対し、相手サポーターが猿の鳴き声を真似た嬌声を浴びせつづけたのだ。アフリカ出身の黒人選手に対する、まごうことない人種差別である。
繰り返される人種差別行為に対し、耐えながらプレーを続けていたエトーだったが、後半、相手サポーターが陣取るスタンド前でのコーナーキックの際、鳴りやまない猿の鳴き真似にたまりかねたエトーが、猛然とピッチを後にしようとする。味方選手、相手選手がエトーに走り寄り、主審までもが必死になだめようとし、最後はバルセロナのライカールト監督になだめられてプレーを再開した。

「その時、ロナウジーニョは言ってくれた。『兄弟よ、俺も一緒に出る(ピッチを去る)』と。でも、一人の黒人の相手選手が近寄ってきて、こう言ったんだ。『お前は勇気がある。頼むから、あいつらがこんなひどいことをしないように見返してやってくれ。試合を放棄するのではなく、ゴールという形で。』」

その後、エトーは決勝点をアシストし、次節には決勝ゴールを決めた後、客席からカメルーンの国旗を受け取ると、高々とそれを掲げてみせたのだった。

貧しさと戦い、夢を諦めず、誇りを失わずに生きていくためには、ゴールし続けるしかなかったというエトー。自身初の、それもアフリカ大陸で初めて開催されるワールドカップに、アフリカ全土の誇りを背負い、遂にエトーが登場する。

今夜、我らが日本代表は、エトー擁するカメルーンを相手に、どんな“誇り”を見せてくれるのか。

The official 2010 FIFA World Cup™ poster
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by marc_keio | 2010-06-14 13:40 | football