不朽の名作は生まれるか

Match 3 - Group B
Argentina 1-0 Nigeria
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監督ディエゴ・マラドーナ、主演リオネル・メッシで臨む作品の序章は、波乱万丈な先行きを予感させるには充分な幕開けだった。

“セレステ・イ・ブランコ”(空色と白)と呼ばれる伝統のユニフォームを身に纏ったアルゼンチン代表の選手たちは、今大会ここまで登場した各国代表の中でも、やはり格別のオーラを放っていた。ベンチに座る“24人目の名選手”も、この日は見慣れぬスーツ姿で登場。“過ち”を犯した灼熱のアメリカ大会から16年、奇しくもマラドーナにとってワールドカップ最後の試合となったナイジェリアを相手に、監督としてのワールドカップ初戦を迎えた。

「彼がベンチに座るとはね。賭けてもいい。大会中、ピッチ上の多くの選手がベンチのマラドーナを見るはずだ。彼はそれほど大きな存在感を放っている。」

ジョゼ・モウリーニョをしてそう言わしめるマラドーナの存在は、確かに際立っていた。試合開始からテクニカル・ラインぎりぎりに立つと、檻に入れられた猛獣の如く右へ左へ、喜怒哀楽を全身で表現しながら“ハードワーク”した。
俄然、勢いづくアルゼンチンの選手たち。メッシ、イグアイン、テベス、ディマリアという超強力攻撃陣が次々とナイジェリアボールに襲い掛かり、完全に試合の主導権を握る。
伝統のユニフォームの放つオーラ、大会屈指ともいえる攻撃陣、ベンチにはマラドーナ。立ち上がりのナイジェリアが、アルゼンチンの全圧力に引いてしまったのも無理はなかった。結局この時間帯に生まれた1点が、決勝点となった。

前半6分、ベロンのコーナーキックにガブリエル・エインセがヘッドで合わせ、幸先良くアルゼンチンが先制。「見たか!?」というガッツポーズで喜びを爆発させるマラドーナ。アルゼンチンの見事なサインプレーだった。

「インテルはチャンピオンズ・リーグ決勝でメッシを止めることに成功したが、それと同じやり方で挑んでも機能しないだろう。バルセロナとアルゼンチンではメッシの役割が違うからだ。ポジションも違うし、ボールポゼッション、プレッシャーのかけ方まですべて異なっている。ナイジェリア、韓国、ギリシャがインテルを真似ても、メッシ対策にはならないだろうね」
(ジョゼ・モウリーニョ)

はたして「メッシの大会」になるのか――。
世界中の関心事はそこに尽きるだろう。良くも悪くも「主演メッシ」。監督マラドーナは、大会前から「メッシを中心にチームを作る」と明言し、大会前には単身バルセロナに渡りメッシと会談、試合中もメッシが削られれば顔を歪ませて猛抗議した。

守備ブロックを築くナイジェリアに対し、メッシは再三、中盤まで引いてボールにからみ、突如ギアを上げて味方とのワン・ツーからゴールを脅かすことを繰り返した。しかし、テベス、イグアインは窮屈そうで、メッシとのコンビネーションは未だ発展途上である。さらに、ボールを失うとディマリアを含む前線4枚が置き去りにされ、カウンターを食らうシーンも。今年36歳のセバスチャン・ベロンがゲームメイクを担当するが、ベロンのミスからカウンターを食らうことも目についた。主将を務めるハビエル・マスチェラーノのリスク・マネジメントの限界がこのチームを支えるに耐えられるか心配なところだ。
c0119546_1391330.jpgマラドーナが「恋してる。」と告白したというお気に入りのホナス・グティエレスは、アメフト選手のような逞しい肩を揺らして右サイドでファイトしつづけたが、前半28分にナイジェリアのダイレクトプレーから裏を取られて決定機を作らせるなど、守備に不安が残るパフォーマンスだった。

とはいえ大会で最も話題沸騰間違いないアルゼンチン代表は白星スタート。「選手として出場するのか」などと揶揄されるマラドーナだが、まさに選手のようにタッチライン際でピッチの選手と共に戦うかのような姿は滑稽でもあり、感動的でもあった。

監督マラドーナ、主演メッシの物語は始まった。駄作で終わるか、はたまた名作として歴史に刻まれるか。チームが危機に瀕するとき、かつてロサリオで行われたブラジルとの南米予選のハーフタイムにも発した言葉を吐いて、マラドーナは選手を叱咤することだろう。

「おい、自分が何を着てプレーしてるかわかってんのか?!アルゼンチン代表のユニフォームだぞ!!覚悟を決めろ!!死に物狂いで戦うんだ!!」
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by marc_keio | 2010-06-14 14:37 | football